第三回テクテクテク勉強会足彩澳门即时盘_现金体育网¥游戏赌场
今年度初回のテクテクテク勉強会は、7月にオンラインで行われた。今回は「熱流体工学から見るwithコロナ時代の新たな生活様式」というタイトルで岐阜工業高等専門学校の山本高久先生にご講演いただいた。この講演では、熱流体工学という分野とその研究事例、そしてCOVID-19状況下での飛沫感染によるリスクを評価する、という非常にホットな話題を後半にお話いただいたので報告する。
最初に熱流体工学のおこりから現在に至るまでの流れをお話しいただいた。初期の頃はBC.200年頃のアルキメデスの原理にある浮力の発見にまで遡る。その後様々な概念が取り入れられて、1843年のナビエストークス方程式の発見により流れや物質等の輸送を予測するなど、1800年代におおよこの分野の基礎が出来上がった。1900年代以降になるとコンピュータの導入により解析がさらに盛に行われるようになり現在に至っている。
この領域の身近なところで大きな貢献があったこととしては、飛行機の翼の形状があげられるとのこと。1960年代くらいまでには飛行機は現在のような構造になったが、数値流体解析で空気の流れを予測した結果、翼端に渦(翼端渦)が発生していることが判明し、より空気抵抗の少ないウイングレッドを採用するなど、まだ翼の形状は変化している。航空分野も進化の過程にあり、それには熱流体工学が大きく貢献しているところも興味深い。
最近の熱流体工学の新たな適用分野として医療分野にも注目が集まっているとのこと。
副鼻腔炎、特に難病指定を受けている好酸球性副鼻腔炎への適用例を紹介いただいた。副鼻腔炎とは、副鼻腔と呼ばれる場所(主には頬やおでこ付近)に膿やポリープができてしまう病気のことで、これらの膿などを取り除く施術で治すことができる。好酸球性副鼻腔炎の場合も同様に膿やポリープが副鼻腔にできてしまう病気ではあるが、手術でこれらを摘出しても再発することが多く、そのためにこの病気は医療では難病指定されているそうである。
副鼻腔炎の治療には薬剤を用いた方法として、ネブライザーなどのように鼻から薬剤を入れる方法が多く用いられるが、最近では経鼻呼出療法が提案されているとのこと。この治療法は、口から薬剤を吸い込んで鼻から吐き出す治療法で、喉の奥など従来の方法では到達しにくい箇所に薬剤を届けることができる手法であり、実際の臨床でも膿やポリープの再発率が低くなることが判明している手法とのことである。しかし、経鼻呼出療法は患者自らが薬剤を吸い込むことから、吸い込む力に個人差が生じてしまう。また、どのような条件だと治療効果があるのか、どこに薬剤を到達させると副鼻腔炎を再発させないのか、などを確かめるために熱流体力学の数値解析が実践されているそうである。実際の結果では、喉から来た薬剤は鼻咽頭に衝突し、そこから沿うようにして副鼻腔あたりにも流れが生じていることが判明した。これこそが経鼻呼出療法の流れの特徴であるということも分かり、今後も適用が広まっていく手法となっていくとのことである。
医療分野で臨床と、熱流体解析を合わせることで治療のさらなる確証を得るという非常に興味深い内容を紹介していただいた。体内で薬剤がどのように移動していくかは患者本人はともかく、医者ですらも確認することができないが、この分野の成果により予測することができるのは医療分野としても期待したい分野となるのは間違いない。ただ、熱流体力学などを適用させるには患者の三次元モデルを構築しそれらを使って解析を行う必要があるため、結果の解析まで最速でも2週間はかかっているという現状はなかなか難しい。現在のところ、それを解決する一手段として複数の三次元モデルから患者と似たモデルを機械学習で推測する方法が挙げられていたが、不確かさも併せ持つ機械学習を精度が求められる医療現場にどう導入されるのかが気になるところである。
ここからは、山本先生が行った足彩澳门即时盘_现金体育网¥游戏赌场感染症での飛沫の移動に関する解析結果の話題に変わる。本来なら熱による対流等も考慮する必要があるが、今回の結果は時間と計算機環境の都合上、それらは考慮せずに飛沫粒子の輸送だけで計算した結果とのことである。解析の精度等の観点から、必ずしも妥当な考察になっているという保証は取はないが、飛沫移動の傾向は判断できるので、それらについてお話し頂いた。
くしゃみで吐き出される飛沫は、具体的なくしゃみのストロボ撮影をされた文献結果により速度は約20メートル/秒として計算を行った。今回のモデルは、身長180センチメートルの人物二人が2メートル離れた場所に向かい合って立っており、片方の人がくしゃみをした時を想定している。今回の計算によると、マスクなしでくしゃみをしてから0.5秒間では向かい合った相手のところまで飛沫は到達してはいないという結果が分かった。その結果から、ソーシャルディスタンス2メートルをとることの意味はあるのかもしれない、とのこと。また、対面する二人の間に扇風機の微風程度の風が下から上に吹いている状況の場合、その風の影響で飛沫が相手の所まで全く届かない、という結果も伺った。垂直方向の微風があるだけでかなり防げることも興味深い結果であった。換気が必要であることはすでに知られているが、換気することが難しいないなら、そうした風のバリアによる効果を検討すべき、とのことである。
今度は、モデル化されたオフィスでの飛沫の広がりについての結果を見せていただいた。モデルは、13メートル平方で天井までの高さ3メートルという空間に、オフィスに設置される天井に埋め込み型の室内空調機4台を設置する想定である。天井を四つに等分割し、その中央に空調機を設置した状態を想定した計算結果である。
エアコンのオン?オフ、くしゃみをする場所など、いくつかの諸条件の結果を見せていただいた。そこで気になったのは、四つのエアコンのうち、対角線上の二箇所のエアコンのみ稼働した状態での結果である。部屋の中央で飛沫が飛散した場合と、稼働しているエアコンの一台の直下で飛沫が飛散した場合の二つの結果である。部屋の中央で飛散した場合は、部屋の中央付近は空気が攪拌されやすく飛沫の濃度が短時間のうちに下がってしまうことが確認された。一方、エアコンの直下で飛沫が飛散した場合、すぐには攪拌が起きず、先ほどの部屋の中央での飛散と比べてもある一定時間は濃度差が保たれる傾向が見られた、などの結果が紹介された。個人的にはエアコン直下で飛散した場合、エアコン上方に吸い上げられてすぐ部屋の至る所に攪拌させられるのかと思ったが、この結果ではそのような移動はあまり見られず、意外な結果であった。先生によると、これはエアコンから吹き出された風による影響が大きいのではないか、とのことであった。
その話を聞くとIAMASのワークショップ24の部屋の空調が心配になる。この建物には換気扇はいくつか設置されているが、換気で利用できる窓がない。空気の入れ替えをするためには、どうしても換気扇による排気しかない。先生の意見では、サーキュレータのようなもので部屋の換気扇まで運び、換気扇で排気すればいいとのことだが、換気扇の能力が小さいと排気されなかった風が再循環して降りてきてしまうので効果が薄れてしまうらしい。この建物の部屋は機密性という点では優れているが、COVID-19環境下での換気という点では大きな欠点となる建物である。一度先生に見てもらい、対策を考えたいところである。
最後の質疑の中ではマスクの代わりに日本では馴染みのある扇子で口を覆ったら飛沫の飛散状況は大きく変わるのではないか、という意見が本学教員よりあった。扇子のサイズやどのように口を覆うかという点に影響するが日本らしい感染防止のあり方も見えてきそうな予感があった。それにしてもこの分野は、人間の目には見えないものや目の届かないところも計算することで物質などの予測を行い、我々の生活に大きな貢献をしている。先生たちのこの分野の成果は、医療?医薬分野の先生方や、未来の人類において非常に頼もしい存在である。今後の先生たちのご活躍に期待したい。